梁の上から


或る渇望

ここの所妙な渇きに苛まれている。何故か渇きを感じるのだ。具体的な喉の渇きではなく、知識や権力への渇望といったような渇きだ。今日一日は自分が何を求めているのかを追及する事に費やされるであろうことが予想された。
だが果たしてこの渇きは本当に具体的なものでないのだろうか?それは実際に水を飲んでみる事で解決した。確かに喉は潤ったし、具体的な渇きもあったかもしれない。だがここ暫く感じている渇きは癒されなかった。

では知識や権力への渇望なのだろうか?試しに本棚にある昔買った学術書を開いてみる。成程確かに悪くは無い。たまにはこういった頭の良くなりそうな本を読んでみるのもいい。しかし進むこと数ページ、やはり例の渇きが頭をもたげてきて、一向に集中できなくなってしまった。
では権力への渇望なのだろうか?小生は知らず知らずの内に大統領への野心を燃やしていたのだろうか?いや、それも違うだろう。権力とは小生から一番遠いものである。人間というものは対象からあまりにも距離が離れすぎていると、却って興味関心を失うものだ。

ではこの渇きは何なのだろうか?考える事数時間、ついに結論が出た。ふと手元にあったUSBメモリを眺めていると、あるものが脳裏に浮かび、すぐさまそれが今自分が最も欲している物であると気が付いた。
羊羹だ。小生は今もの凄く羊羹を食べたい。もはやその欲求は「羊羹を食べなければならない」という使命と同様であるように感じられた。思い立ったが吉日、小生は家を飛び出し、近所のコンビニへと急いだ。

さてコンビニというものは人間の視線を誘導し、欲望を誘い、様々な余計な物を買わせようとする構造になっているらしいが、最早小生には効果が無かった。一目散へ菓子売り場へ向かい、羊羹を探す。果たして羊羹は無かった。何度探しても無かった。
"コンビニエンス"ストアだというのに羊羹の一つも置いていないのか。このちっぽけだがそれでいて支配的な欲求すら満たせないのか。小生は失意のうちに店を後にし、そう言えば冷やし中華ももの凄く食べたかったのに結局食べていなかった事を思い出した。

一言で言うならば「羊羹が食べたかったが近所のコンビニには無かった」というだけの話である。

2014/10/11
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