梁の上から


日記

ここが俺の日記帳だ

2017/3/30/
「いつの間にか大人って呼ばれる年齢になっちまってたな・・・」
彼はそう呟き、両手を頭の後ろで組んだ。呟くと言ってもSNS上の事ではなく、リアル空間での事で、どちらにせよ耳を傾けるものなど居ようはずも無かった。
彼は私である。本来ならば一人称で書くべきなのだが、しかし弱小テキストサイトの主である、つまり腐っても物書きの端くれであるという自惚れから三人称で記すことにしたのだ。
彼は迫りくる新生活という名の地獄への不安からか、或いは積もり積もった不満が再びくすぶり始めたのか、一度は失っていたテキストを書くという行為への執念を再び見せ始めていた。皮肉な事に、彼はそういう人間であったのだ。かつて誰かがそういったように元々何かを書くという行為はそういうものなのかも知れなかったが。どちらにせよ、彼は不満や憎悪を燃料とし、心中の内燃機関を始動させつつあった。
とは言え、彼の日常などたかが知れたものである。かの有名な「パソコンの前には三年」の諺の示す通り、社会的意義の認められる物には一切の熱意や努力を注げない替わり、そういったものの認められない事にかけては無類の集中力を発揮する人間であったので、まさにパソコンの前に座っている以外の体験が思い出せないのであった。
彼は大きく溜息をつき、机の下に隠してあったアルコールに手を伸ばした。酒が嫌いなわけではなかったが、彼はむしろ下戸であった。ある小説に影響されて、格好付けで飲み始めたという事は全く否定できない事実である。それでも彼は栓を抜き、コップに軽く一杯分注ぎ、普段ならば数十分かけて飲む量を二口で飲み干した。
その酒のアルコール濃度は実際40度近くあった。彼は顔を顰めたが、生来の格好付けで我慢し、コップを置いた。アルコールの影響を受け体温が上がり、そして再びパソコンに向かった。
そして彼は覚束ない手で何度もミスタイプを繰り返し一連の日記を書きあげ、私にこの日記をサイトにアップロードすべきか尋ねてきた。酔いの最中に書いた駄文であるが、しかし久方ぶりに書いたテキストには違いない、そう問う彼に、私は「テキストサイトの恥はかき捨て」という諺を伝えた。それ以上介入する気になれなかったのだ。
彼は暫し思案した後、納得したようにテキストを彼のテキストサイトにアップロードし、眠りについた。私はそれを見届け、自分も明日用事があるのを思い出し、急いで寝床に着いた。

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